マス・メディアの影響@ソキウス「見識ある市民のための社会学リファレンス」

 國學院大學教授野村一夫によるマス・メディアの影響に関する学説史の概説。簡明に説明されています。
 それによれば、マス・メディアの影響に関する学説の過程は、三段階に分類できるそうです。1、強力効果説。2、限定効果説。3、複合効果説。*1この第三の学説は「複合影響説は基本的にマス・メディアの影響力を大きくとらえる。その点で初期の単純な強力効果説と軌を一にするけれども、もとのさやへもどったと考えるべきではない。むしろ、それは強力効果説と限定効果説に共通していた理論的単純志向を実証的かつ理論的に修正し相対化する洗練のプロセスととらえるべき」というもの。
 さて、問題のマス・メディアの影響力に関しては、このように記述されています。マス・メディアが人の考えを全く転向させるような影響力を持たないというのは、限定効果説と同様。しかし、「マス・メディアが独自の--しかも強力な--機能をもっているのは、「どう考えるべきか」ではなくて「なにを考えるべきか」に関してなのである。マス・メディアは「今なにが問題なのか」という争点=議題を設定することについては強力な影響力をもつ。」こう考えると、マス・メディアの影響力が非常に大きなものと理解できます。というのは、マス・メディアが大きな影響力を持つと言えるのは、それが個人の問題に対する思考に影響するからではなく*2、人の問題認識可能性*3に影響するからと言えます。思考の環境を管理する、と。どうやら、マス・メディアの影響は思考の枠組みに対して大きいと言えるようです。引き続き、調べてみたいと思います。

*1:前の二つに関しては、以前書いた記事も参照していただいくとして、この場ではパス。

*2:例えば、戦争に反対する人を戦争賛美者に変える、とか。

*3:例えば、ある戦争が起きていても、マス・メディアで取り上げられなければ、それは重要な戦争ではない、とか。